心理療法の事例
問題として見るか、可能性として見るか


相談者 :小田香子さん(仮名)
性別  :女性
職業  :主婦
相談  :子供がテレビゲームばかりしていて、他のことに集中しない。
家族構成:夫婦と子供2人(男の子)




小田さん「子供(長男)がテレビゲームばかりしていて、
     他のことには集中できません。なんとかならないでしょうか」

鈴木  「そうですか。お子様は好きなことに集中できるのですね」

鈴木  「では、これまでテレビゲーム以外に、何か集中できたものはありますか?」

小田さん「以前は、将棋にはまっていました」

鈴木  「将棋ですか。それは、ご両親にとって望ましいのですか?」

小田さん「はい、以前は将棋教室にも通っていました」

鈴木  「それはいいですね。将棋は、今もやりますか?」

小田さん「いいえ・・以前は、主人と子供で将棋を楽しんでいましたが、
     将棋教室でマンガばかり読んでいた時期がありまして、
     それでは、意味がないということで、主人が無理やり
     将棋教室をやめさせたのです
     それをきっかけに、将棋そのものをやらなくなってしまって、
     今では、興味を示しません」

鈴木  「以前は、興味があったのですね
     ではその後、親子で将棋をやってみたりはしましたか?」

小田さん「ええ・・私(母親)が相手になりましたが、
     あまりに私が初心者であるせいか子供がすぐに飽きてしまって・・
     主人とは、将棋教室を無理矢理やめさせたせいか、
     一緒にやろうとはしません」

鈴木  「そうなんですか
     では、あなた(母親)とご主人で、将棋をやったことはありますか」

小田さん「それは無いですね~・・・」

鈴木  「では、あなた(母親)とご主人で、将棋をやってみましょうか
     もちろん、お子様が家にいる時にです
     これは、できそうですか?」

小田さん「それなら、簡単にできそうです」

さて・・・ここで伝えている「ご夫婦で将棋をやっていただく」
という課題を実際に行っていただきました。
すると後日、とても嬉しい報告がありました。

以下、報告の内容です(本人了承済)。


主人に話して、次の日から早速夫婦で一致協力して始めました。
二人で楽しそうに将棋を始めたところ、
子どもたちがゲームをやめて集まってきました。
私たちの将棋に首を突っ込んできて、いろいろと助言をしていましたが、
そのうち隣りにもうひとつ盤を持ってきて、二人で将棋をやり始めました。
勝負がすぐつくと、今度はママとやろう、パパとやろうと、交流戦になりました。

目を輝かせて、楽しそうに将棋の話をする長男を見たのは、ほんとに久しぶりです。
以前は主人と毎日のように将棋をしていたのですが、
将棋に興味を待たなくなってから、誘っても全然乗ってきませんでした。

次男はあまり将棋は好きじゃないと言ってたのに、
私としようと言って、二人で真剣に対局しました。
私が負けると、すごく自信がついたみたいでした。
(わざと負けたのではなく、実力です)

次の日も、その翌日も子どもたちから将棋しようと言ってきました。
長男は、主人に勝ったり負けたり好勝負のようで、
喜んだり、悔しがったりしながらも私にいろいろと解説してくれます。
以前はサッパリわからなかったので、いい加減な返事をしていましたが、
今はわからなくても一所懸命聞いています。

沈滞感の漂っていた我が家の雰囲気も、なんだか変わってきました。
将棋をやめると、相変わらずゲームをやり続けているのですが、
今までとなにか違う感じがします。
活気がでてきたんでしょうか。

具体的で、小さなことで、無理なくできて、楽しくて、おまけに夫婦も仲良くやれて
素晴らしい方法を、ほんとにありがとうございました。

答えはほんとに簡単なところにあるのですね。
これからの生き方すべてにつながってくるものだと、わかりました。
簡単なことを、わざわざ複雑にしてしまって、
見えなくしてしまっていることが、いっぱいあったんだなあと思います。
感謝申し上げます。




ここでお話した内容は、
問題に対して、どのような視点で捉えると良いかということです。
その中でも、今回のご相談は、皆さんに伝わりやすいものでしたので、
紹介させていただくことにしました。

''多くの場合、子供に何か問題があると、
''
1.子供に、“何かをやらせる”
2.子供に、“何かをやめさせる”

という、“命令視点”になりがちです。

もちろんそれで、うまくいくこともあります。
しかし、それでもうまくいかない場合もあるのです。

多くの人は、基本的に相手からコントロールされることを嫌います。
特に、子供はその傾向が強いといえるでしょう。
でもその反面、人は「相手をコントロールしたい」という要求もあったりしますね。

つまり、

「相手からコントロールされるのは嫌! でも、自分の要求は聞いてほしい!」

少々大袈裟かもしれませんが、こんな感じでしょうか。
これは、子供だけでなく大人も同じですね。

ですから、この場合は子供をコントロールするという視点から、
別の視点に切り替えることが必要になってきます。

それにはまず、
うまくいっていないことをコントロールするのではなく、
うまくいっていることを見つけるようします。

さらに、一見問題として捉えているものを、可能性として見いだすのです。
今回の場合は、好きなことには集中できるという点がそれにあたります。

今回、可能性として見いだした点は、以下の通りです。

1.子供(長男)は好きなことに集中できる
2.子供は以前、将棋が好きであった(潜在的には今も好き)
3.以前は、父親と将棋を楽しんでいた(将棋のレベルもほどよい感じ)
4.母親とは、将棋教室をやめた後でも将棋をやったことがある

これらに加え、私はさらにもうひとつ心の仕組みを利用しました。

それは、「人は自分が気になったことを、なかなか無視することができない」
というものです。

今回の場合、子供は潜在的には将棋が好きだということがわかっています。
しかし、好きなことでも相手から強制されること(コントロールされること)
には抵抗を感じます。

このような理由から、「両親で将棋をする」という行動課題を与えたのです。

心の問題の多くは、問題の原因を探るよりも、解決の糸口を探る方が効率的です。
さらに、その解決の糸口は、問題を抱える本人の中にあるだけとは限りません。
家族であれば、問題解決の糸口を家族全体から探ることもできるのです。

そして、問題解決の糸口は、ほんの小さな行動であることが重要です。
つまり、誰一人としてリスクを負わず、簡単にできることであることが重要なのです。

たとえそれが子供の問題であったとしても、親が無理をしすぎてしまったのでは、
今度は、親が心の問題を抱えてしまいます。

子供を育てるご両親の多くは、
自分自身が辛くなってしまうような行動をとってしまいます。
そして、そのことにより、子供だけでなく、ご両親の自尊心が失われているのです。
ですから、お子様の心の健康よりも先に、まずはご両親の心の健康が大切なのです。

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